不動産オーナーは今すぐ「お客様思考」を手放して!

このコラムは2026年3月23日に作成および更新したものです。

見過ごされた不正とその土壌

およそ100人の社員が顧客から業務外の金銭を総額約31億円受け取り、そのうち20億円超が弁済されていないとされる──。
年始に報じられた大手外資系保険会社の元社員による不正問題は、ただただ驚くほかない出来事である。

長年にわたり、組織として不正を是正できなかった点は重い。この背景には、正常な判断の排除や、組織としての危険な意思決定、すなわち「集団浅慮」の影響も否定できないのである。
搾取した側の行為が論外であることは言うまでもない。しかし一方で、金銭を預けた側に、まったく落ち度はなかったのだろうか。

私なりに考察した主な要因は二つある。それは「お金を学ぶ機会の乏しさ」と「お客様思考」である。

二つの要因が生む盲点

日本では、欧米諸国と比べて、幼い頃からお金について学ぶ機会が乏しいことが、かねてより指摘されてきた。

たとえばイギリスでは、義務教育課程の中で金融教育が体系的に位置づけられており、子どもの頃からお金に関する基本的な知識や判断力を養う仕組みが整えられている。
そして、もうひとつが「お客様思考」である。

「自分は“お客様”なのだから、良い待遇を受けるのは当然であり、まさか不利益を被るはずがない」──。
普段、言葉にすることはなくとも、こうした認識が心のどこかに潜んでいるのではないだろうか。

今回挙げた二つの要因は、賃貸経営に向き合う不動産オーナーの姿勢においても、決して例外ではない。

賃貸経営に必要な視点転換

住宅や不動産、保険、クルマ、貴金属など、取引金額が高額になるほど、売る側・買う側の双方に「お客様像」の固定観念が生まれやすい。これは、日本の商慣習の特徴の一つとも言える。

アパートを建ててから10年、20年と年月が経過しても、オーナーの意識にはハウスメーカーや不動産会社に対する「お客様」という立場だけが残り続ける──。とりわけサブリースをはじめ、運営の多くを委ねる形では、その傾向が一層強まる。
このように、賃貸経営は数ある事業のなかでも、極めて複雑な構造を内包しているのである。

アパートを建てる、不動産を購入する──この瞬間までは「お客様」でよい。
しかし、ひとたび賃貸経営が始まれば、意識を経営者マインドへと切り替えることが不可欠である。
オーナーの皆さんに、あらためて問いかけてみたい。
あなたは、賃貸経営の主導権を握れているだろうか。

(2026年3月22日)