「そんなに建てて大丈夫?」──人口減少時代の賃貸アパート建築ラッシュ

人口減でも止まらない建設ラッシュ

ことし厚生労働省が発表した2024年の出生数は68万人。18年連続で死亡数が出生数を上回り、人口の「自然減」は過去最大の89万人に達した。これは九州で2番目の都市・北九州市に匹敵する人口が、1年で減った計算になる。 一方、広島県では若年層の首都圏流出に歯止めがかからず、転出超過は5年連続で全国ワーストとなる公算が高い。
こうした中でも、街では集合住宅の建設が盛んだ。「こんなに建てて大丈夫なのか」と感じる方も多いだろう。
実は「大丈夫」——いや、正確には「これまでは大丈夫だった」のだ。

歪(いびつ)な社会構造が生む“見掛けの需要”

根拠となるのが、総務省の「住宅・土地統計」である。
2013年の空き家数は820万戸(空き家率13.5%)、2023年は900万戸(13.8%)。10年で80万戸増えたにもかかわらず、空き家率はわずか0.3ポイント上昇にとどまり、横ばいといえる。

これは賃貸アパートの供給と需要の均衡が背景にある。10年間で増えた空き家80万戸のうち、賃貸用住戸は14万戸。一方、国土交通省の統計によれば、同じ期間に新たに供給された賃貸住宅はおよそ375万戸に達する。
単純計算すれば、供給に対する空室の増加はわずか3.7%。入居率に換算すれば、96%を超える高水準だ。

なぜ人口減少下でも新築の賃貸需要は堅調なのか。その答えは「世帯数の増加」である。
日本では1920年の調査開始以来、世帯数が一貫して増加しており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2030年の5773万世帯がピークとされる。主な要因は「一人世帯の急増」だ。
広島市でも傾向は同様で、安佐北区のように人口が1割近く減った地域でも、一人世帯の増加により世帯数はわずかながら増えている。

住宅メーカーと世帯変化の“奇跡的連携”

この十数年、賃貸住宅を供給するメーカーには、世帯数の増加という追い風が吹いていた。
2015年の相続税改正も、相続対策としてのアパート建築を後押しした。

もう少し踏み込むと、広めのファミリー向けよりも、コンパクトなワンルームを多く配置した物件の方が、収支計画上は有利に見える。オーナーにとっても金融機関にとっても安心材料となるためだ。
こうした住宅メーカーの思惑と、一人世帯の急増は、まさに「奇跡的な一致」といえる。

では、オーナーもメーカーも、この成功モデルを続けてよいのだろうか。
その答えについては、改めての機会に触れたい。まず知っておきたいのは、私たち日本人がまだ「世帯数の減少」を経験していない、という事実である。