“全部お任せ”のツケ──双方向で築く、これからの賃貸経営

賃貸管理の歴史的背景と問題点

これまで私は12年間の業界経験を活かし、オーナー側からは見えにくい賃貸管理の歴史的背景や構造的な課題について、可能な限り開示してきた。
2025年6月16日付の『全国賃貸住宅新聞』では、不動産業界における賃貸部門(居住用)の関連企業が全体の25%にとどまる一方、従事者数は全体の65%を占めていると報じられた。この数字は、賃貸管理業務の属人性の強さ、そして業務範囲の広さがもたらす生産性の低さを如実に物語っている。

住宅・不動産業界が「クレーム産業」と揶揄されるのも、声が挙がったところから優先的に対応していく“事後対応型”のサービス構造に起因している。
また、これまでの賃貸管理の現場では、管理戸数の多さが一つの評価指標とされ、人手を増やしてでも管理数を伸ばすという“量の追求”がなされてきた。

声なき現場の品位低下

しかし今、働き手の減少を背景に、DX(デジタルトランスフォーメーション)やアウトソーシング(外注)を活用した業務効率化が、業界全体に求められている。もちろん、効率化は重要である。しかし私は、その”行き着く先”に対して、危機感を抱いている。というのも、本来オーナーや物件に対して最も強い責任感と当事者意識を持っているのは、現場を担う担当者である。ところが皮肉なことに、効率化が進むほど彼らは現場から遠ざかり、やりがいや自己肯定感を失っていく可能性がある。
写真は、ある賃貸マンションの掲示物。真夏にも関わらず、いまだ掲げられた「凍結への注意喚起」。とにかく見苦しい。 掲示そのものが目的化し、「貼るまでが仕事、貼ったら終わり」に陥る。不動産の品位は静かに、確実に下がっていく。

オーナーの積極参加が拓く賃貸管理の未来

今回事例に挙げた賃貸マンシヨンにも管理会社の看板が掲示されているが、「声なき現場」においては、こうした違和感すら日常の風景に溶け込んでいく。

今、賃貸管理の現場に求められているのは、オーナーに対し「すべてお任せください」と言って済ませる姿勢ではない。むしろオーナーの皆さまにも、賃貸経営という“事業”に主体的に関わっていただけるような、双方向の関係づくりが不可欠である。「対応が悪い」と現場の担当者だけを責めたところで、根本的な解決にはつながらない。
構造上の課題をオーナーとも共有し、「複数の目」で現場を見つめ、より良い管理体制をともに築いていく。オーナーも積極的に声を上げ、担当者と前向きに意見交換をすることは、決して悪いことではない。そうした姿勢こそが、これからの賃貸管理において重要になってくるのではないだろうか。